【2~3面】 ************************************************** # 特集 四季の移ろいとともに思い出される故郷 和歌山 ************************************************** -------------------------------------------------- # 漫画家 田村由美さんにインタビュー -------------------------------------------------- 主人公・久能 整(くのう ととのう)が、謎も人の心も解きほぐす新感覚の漫画作品「ミステリと言う勿(なか)れ」。2018年の発売開始から多くの人気を集め、今年1月にはテレビドラマ化され、大きな話題となりました。 その原作者は、和歌山市出身の漫画家・田村由美さん。今回は、同作品をはじめ、第一線で活躍を続ける田村由美さんに、和歌山市での思い出や、作品との関わりについてお話を伺いました。 田村 由美 さん(和歌山市出身) 1983年デビュー。 『BASARA』で第38回、『7SEEDS』で第52回小学館漫画賞受賞。 2013年に和歌山県文化功労賞を受賞。現在、「月刊flowers」で 連載中の『ミステリと言う勿れ』は2022年1月にTVドラマ化し、第67回小学館漫画賞受賞。「増刊flowers」では『猫mix幻奇譚 とらじ』連載中。 -------------------------------------------------- # よく行った七曲市場、丸正、秋葉山のプール -------------------------------------------------- 高校卒業まで普通に子供時代を過ごしました。本当にごくごく普通に家と学校の往復をしていたので、行動範囲も狭く限られた所にしか行ってません。友達の家の近所の七曲市場、家族とよく行った百貨店「丸正」、繁華街ぶらくり丁、書店「宮井平安堂」さん、県庁前にあった映画館…。夏休みの秋葉山のプール(当時の)や、ぷらぷら歩きながら屋台を楽しんだ築港の花火大会。多くがなくなったか縮小されているようです。月日の流れを感じます。ちょっとキラキラして、でも単なる日常で、四季の移ろいとともに思い出されます。 -------------------------------------------------- # お城でライダーごっこ、岡公園の恐怖の滑り台 -------------------------------------------------- うちは和歌山城の近くだったので、学校から帰ったら友達と自転車を飛ばして遊びに行ってました。石垣を登ったり、砂の丸でライダーごっこしたり。動物園も楽しかった。隣の岡公園にも勿論一緒に。あの滑り台は子供にはなかなか恐怖でかつ魅力的でした。食べ物で好きだったのはぶらくり丁にある「力餅」の“しのだ”と呼ばれるきつねうどん。自分の身体のいくらかはそのうどんでできてると思うくらいよく食べてました。あとは市内のものではないですが、八朔。大好きです。梅干しや醤油は今も和歌山のものを取り寄せています。 -------------------------------------------------- # 和歌山での経験が作品に活かされている -------------------------------------------------- 漫画には自分の人生すべて、思考や体験すべてが注入されると思っています。楽しいこと辛いこと恥ずかしいこと、すべてです。和歌山での子供時代は自分の基本を作っていると思うので、意識するしないに関わらず、漫画には活かされているはずです。風土として、歴史があって温暖で海がすぐそばというのもきっと大きいです。具体的な場所としては『BASARA』という作品で紀州熊野を舞台にしてますし、『ボクが〜になった理由(ワケ)』シリーズでは紅葉渓庭園をイメージした“つつじ谷”という庭園を出してます。城(跡)の虎の銅像なんかも出てますね。 『7SEEDS』では、和歌山城から聞こえてきたドヴォルザークの『家路』を取り入れている。 -------------------------------------------------- # おおらかな気風、豊かな海山そのままに -------------------------------------------------- 小学生の頃、大雨で洪水になり床下浸水に見舞われたことがありました。休校になって、膝まで水に浸かりつつ子供の自分ははしゃいでました。今、実家の近辺の地下には大きな排水管が通り、もう洪水の心配はないのだとか。そう言って安心している両親を見ると、市の政策をありがたく思います。だけど年々周辺は寂しくなって、シャッター街と化してるとこも多いです。自分も出ていった人間なのでどうこうは言えませんけれど。賑やかな場所は移り変わったと聞いています。海外に開かれたおおらかな気風、豊かな海と山が残っていってくれたらなと思います。新型コロナ対策での決断力、実行力は東京にも鳴り響いていました。マクロとミクロの視点を持って軽やかに動ける市でいてください。 -------------------------------------------------- # 田村由美さん、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。益々のご活躍をお祈り申し上げます。 --------------------------------------------------