(3) 玉津島神社(万葉集巻6-918・万葉集巻6-919)
【歌碑の内容】
<右の歌>
奥嶋
荒礒之玉藻
潮干滿
伊隠去者
所念武香聞
<左の歌>
若浦尓
塩滿来者
滷乎無美
葦邊乎指天
多頭鳴渡
【訓み下し文】
<右の歌>
沖(おき)つ島
荒磯(ありそ)の玉藻(たまも)
潮(しほ)干(ひ)満(み)ち
い隠(かく)り行かば
思ほえむかも
<左の歌>
若(わか)の浦(うら)に
潮(しほ)満(み)ち来(く)れば
潟(かた)をなみ
葦辺(あしへ)を指(さ)して
鶴(たづ)鳴き渡る
【解説】
<右の歌>
この歌は万葉集の巻六に載る歌(九一八番歌)です。(2)の歌碑の長歌に添えられた「反歌二首」のうちの第一首目がこの歌です。和歌の浦・玉津島の全景を詠んだ長歌に対して、この歌では視点を沖の島に絞ります。今は干潮時ですが、潮の動きは干潮から満潮へと転じ始め、沖合の荒磯に根をはった海藻が、満ちて来る潮にゆらゆらと揺れながら次第に海中に姿を消していく様子を想像して歌っています。美しい海藻の動きを通して、自然の神秘に触れた感動を詠んだ歌です。
<左の歌>
この歌は万葉集の巻六に載る歌(九一九番歌)です。(2)の歌碑の長歌に添えられた「反歌二首」のうちの第二首目がこの歌です。第一首目で歌われた満ち始めた潮は、さらに勢いを増して、和歌の浦に満々と満ちてきます。干潟で餌を漁(あさ)っていた鶴の群れは、潮に追われるように飛び立って葦の生えた岸辺に向かって羽ばたいていきます。満ち来る潮と雄飛する鶴の群れと、和歌の浦の雄大な自然をダイナミックに歌っています。
この歌は平安時代の『古今和歌集』の仮名序に取り上げられたことで、一気に和歌の浦を代表する歌として現在に至るまで愛唱され続けています。
万葉集では「和歌の浦」を「若の浦」と書きました。
本ページは、近畿大学名誉教授村瀬憲夫氏にご協力いただき、作成しています。
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