ファイヤーコントロールボックスで新しい消火訓練

 

ページ番号1022394  更新日 平成31年2月21日 印刷 

アメリカ発祥の消防訓練用ドールハウス(ファイヤーコントロールボックス)

ファイヤーコントロールボックス(Fire Control Box)とは

ファイヤーコントロールボックスの写真
ファイヤーコントロールボックスを使った実際の消火訓練

最近は、大きな火事が頻発しています。

それでも実際に炎上火災に出動するのは、消防士一人あたり年に数回程度。

消火訓練は、燃えていない建物に水をかける訓練が大半です。

実際に火を消す訓練は広い敷地や防炎施設、大量の燃焼物など多額の費用が必要になったりします。

でも、実際に炎を見たり火を消す訓練がしたい。そう思う消防本部に作ってもらいたいのがファイヤーコントロールボックスです。

ファイヤーコントロールボックスは、合板で作った高さ1m程度の模型木造家屋のことで、合板(コンパネ)数枚と釘と木工接着剤だけで作れます。

模型内を簡単に部屋割して扉をつけることで炎や煙の性状を体験することができます。

さらに、和歌山市北消防署紀伊分署の作ったファイヤーコントロールボックスは、実際の消火訓練で必要な技術の検証にも使えるように工夫しました。

実際に作ってみよう

完成したファイヤーコントロールボックスと作成職員
完成品と作業職員

まずは、実際に作ってみましょう。

今回は職員の自宅にあった廃材の合板とビスを使って作成しました。

耐火性能を高めるために壁厚を通常の倍の24mmにしています。

職員が作業を交代しながら半日がかりで完成。燃やしてしまうのが名残惜しくなります。

実際に燃やしてみる

室内の木くずが燃えている様子
室内の木くずだけが燃えている様子
フラッシュオーバーの風景
室内全体が炎に包まれた様子

では、実際に炎や煙がどのように発生するかを試してみます。

箱の内部に合板の切れ端やサラダ油などを入れて着火。

はじめは切れ端だけが燃えています。しかし、だんだん室内に煙が充満。そして一気に室内が炎に包まれ、窓から炎が噴き出します。

フラッシュオーバーという火災現象です。

五感で感じる危険性は動画では経験できない貴重な体験です。

失敗も訓練なら経験できる

2階で助けを呼ぶ人
2階の窓から助けを呼ぶ人(段ボール紙)
他の窓をあけることで煙が人を覆い隠す様子
助けようと1階の入口を開けたとたん 煙が人を覆うことに!

もし2階の窓から助けを呼ぶ人がいたら…

助けようと1階の入り口を開けたとたん、助けを求めていた人が煙まみれに。

火災現場では、火煙の吸気口と排気口に気を付ける必要があります。

これは、その実例です。

実際やってはいけない救出方法を体験するのは、訓練の重要な役目です。

和歌山市オリジナル実践的消火訓練

本当に燃やすから本当に消す訓練ができる

放水の様子
CAFS放水で燃焼室内を消火している様子

発案元のアメリカでは、炎や煙の動きを観察することに重点をおいていましたが、和歌山市北消防署紀伊分署で作ったファイヤーコントロールボックスは消す訓練にも使えるように工夫しました。

従来より厚めの合板で作成。室内に可燃性ガスを生成しながらも簡単には焼け崩れません。

散水用ホースで消火。散水用ホースに口径5mmの小さいホースをつなぎ合わせ、消火ホースもミニチュアで作成。放水量も10分の1以下で再現しました。

消火訓練用障壁:実際の家を想定して、ファイヤーコントロールボックスに追加できる扉や障壁を作りました。これで外から放水するだけで簡単に消えない建物火災を再現しました。

 

 

消火技術測定訓練

消火訓練をしている様子
消火訓練をしている様子 隊員は左側の窓から右側の部屋の消火をしています。

ある消防の研究文に放水技能の実態把握と有効な訓練手法の検証というものがあります。

これは、4m四方程度の燃焼実験室を燃やして消火実験を行ったもので、消火技術の中でもどの技術が消火効率の差に繋がるのかを検証したものです。

この検証結果では、「一時放水停止による内部状況確認・内部進入時期の判断・流量の調整及び間欠放水」の3点が特に消火効率の差につながっていることが確認されています。

写真は、検証訓練を再現した様子です。

このファイヤーコントロールボックスには、視界を制限する工夫、簡単に消火できない工夫、内部進入(手を出火室に入れる)しないと完全消火できない工夫がされています。

訓練ポイントとしては、次の3つ。

1.障壁に隠れた場所の消火技術

2.鎮圧による内部進入(手を入れて内部を確認する)の判断

3.間欠放水を駆使した水損防止と火勢確認の頻度

この訓練を実施した結果、職員の放水技能に差があることがわかり、今後はその差を埋める必要があることを痛感しました。

また、この訓練では、出火室側の窓から放水状況と火勢が見学者に見えるようになっています。

放水風により内部の火勢が拡大したときには、見学者から「建物の中はこんなになっているのか。」という声がありました。

現場ではできない消火見学ができることもこの訓練のよいポイントといえます。

まだまだ、できる消火訓練

紀伊分署からの風景
紀伊分署からの田園風景

このファイヤーコントロールボックスを作った和歌山市北消防署紀伊分署は、田園風景が広がる田舎の消防分署です。

訓練がしたくても予算がない。実際に火災を消す機会が少ない。そのような消防本部の方こそ、ファイヤーコントロールボックスの訓練を実施してみてはいかがでしょうか。

知識の蓄積とちょっとしたアイデアで消火技術はもっと向上できます。

火災で悲しむ方を少しでも減らしたい。そう願う消防士さんからのアドバイスや協力依頼お待ちしています。

このページに関するお問い合わせ

消防局 北消防署
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電話:073-452-0119 ファクス:073-452-3946
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